順調なスタートを切った中期経営計画 初年度
ビジネスモデル改革を継続し、新たな事業の創出へ

代表取締役社長  田村 春生

順調なスタートを切った中期経営計画 初年度
ビジネスモデル改革を継続し、新たな事業の創出へ

 

代表取締役社長  田村 春生

初の中期経営計画への反応と社員への浸透

 2024年5月、創業以来初めてとなる2024年から2026年度3ヶ年の中期経営計画(以下、「本中計」)を発表しました。幸いにも、株主・投資家の皆様には「分かりやすい」といった好意的な評価をいただいています。安堵するとともに、皆様のご期待を裏切らないよう、本中計を必ず達成するという決意を新たにしています。

 本中計の策定にあたっては、若手・中堅社員の声を聞き、「新しいことへの挑戦」というAOKIグループのDNAを受け継いだ「既存の延長線上にはない新しい成長ストーリーをつくる」という彼らの強い志を反映しています。その取り組みの主体となる社員に対して、AOKIホールディングス全社員参加の昼礼で説明する場を設けるなどの浸透策を図っています。最も重要な経営資源である「人財」のモチベーション維持・向上を図りながら、目標達成に向けて邁進しております。

中期経営計画「RISING 2026」1年目の進捗と今後の見通し

 10年後のありたい姿「消費者のライフステージ全体を網羅する事業の創出・変革で持続的成長を続ける」企業像に向けて、本中計は事業ポートフォリオを再構築するステージと位置付けており、3年間で年率10%前後の利益成長を目指しています。財務指標として、本中計最終年度にPBR(株価純資産倍率)1.0倍達成を目標とし、AOKIホールディングスが主導して資本収益性や投資効率の向上に取り組んでいます。

 初年度は各事業において計画どおりの新規出店と不採算店舗の閉鎖を着実に実行し、売上高・営業利益ともに期初計画を上回る結果となりました。ROIC(投下資本利益率)、ROE(自己資本利益率)などの資本収益性や、PBRなど市場からの評価も改善傾向が継続しています。

 私は、今後の本中計達成に向けたポイントを次の2点と考えています。

 1つ目は「価格政策」です。昨今のアメリカの関税政策の変化など、政治経済動向によるマーケット変動がこれだけ大きいと、消費者マインドやそれに基づく行動にも影響が出ます。今は消費者が状況を見極めているような段階で、やや消費が停滞している傾向も見られます。一方で、当社グループの商品・サービスは、どちらかといえばリーズナブルな価格設定で、経済状況が厳しくなればニーズが増す可能性を秘めています。引き続き消費者動向を注視し、仕入れのコストアップとのバランスを見ながら、最適なプライシングで需要を取り込んでいきます。

 2つ目は「出店計画の着実な実行」です。本中計では、3年間でORIHICAと快活CLUBを中心に、それぞれ年間20~30店舗の出店を前提とした売上・利益成長を考えています。今のところ順調に進んでいますが、建築コスト上昇に伴い、店舗面積を見直すなど細かな修正を図りながら、各事業の出店計画を確実に達成します。

 2026年3月期の営業利益の見通しは170億円で、最終年度目標の180億円にあと少しというところです。中計は当然ローリングしていくものですが、計画以上の利益が出た場合は次の3年間も見据えて投資などに備えたいと考えます。新規・成長投資はまだ形になっているものはありませんが、様々なテーマが上がってきており、一つひとつ、その可能性を検証しているところです。引き続き2033年度の営業利益300億円達成に向けた種まきに注力します。

 本中計は、売上の伸びではなくビジネスモデル改革による利益成長を重視しています。引き続き採算の低い既存店を改善し、利益を積む施策を全業態で遂行します。

経営基盤施策の進捗

 本中計では、グループとしての成長を支えるために必要な経営基盤―人財や店舗網、ITインフラ、顧客データなどの強化・活用を掲げ、グループ共有ノウハウやアセットを活用したシナジーを追求・発揮していくこと、ガバナンスを一層強化することも明示しています。

 ガバナンス強化策の1つ、取締役会の構成の見直しについては、社外取締役が過半となりました。引き続き経営と執行の分離を図り、AOKIホールディングスの監督機能を強化していきます。また、取締役会の実効性向上にも取り組んでおり、第三者機関による評価を実施して、指摘事項を改善しPDCAを回していきます。指名・報酬委員会の実効性、権限強化についてはスキル・マトリックスを見直し、取締役会の機能強化、企業価値向上につなげます。

 人財については、事業間の人財交流として事業会社間で社員をピーク時に機動的に配置する施策は実施してきましたが、新たにAOKIホールディングスで採用した社員も事業会社に移り、現場で活躍できる環境を整えました。今後も人財育成・活用を最優先事項と位置づけ、優秀な人財の安定的な採用と育成、活躍できる環境づくりに取り組んでいきます。

 店舗網については、AOKIの店舗をグループの別の業態に転換するなど、事業会社の垣根を越えた流動的な活用方法を増やしています。また、これらの施策の効果を最大限に活かすためITインフラ投資を継続しており、グループ全体で統一した社内インフラを導入して全員が情報を共有できるようにするなど、業務効率を改善しています。

 顧客データ活用については、グループ全会員数約4,500万人のデータを有効活用することを目指して取り組んでいます。しかし、2025年1月に快活CLUBで不正アクセスが発生しました。現時点で本件に関わる個人情報の漏洩、二次被害が発生した事実は確認されていませんが、ステークホルダーの皆様には多大なご心配をおかけしました。不正アクセスについては攻撃のレベルが上がっており、絶えず最新情報をキャッチアップして、セキュリティレベルを上げていかなければなりません。現在、グループ横断的なコンプライアンス委員会・リスクマネジメント委員会・情報セキュリティ委員会を設置し、全社的なリスクの管理に努めています。まずは各社の足並みを揃え、グループ全体でレベルを底上げしていきます。

 

株主・投資家の皆様へのメッセージ

 AOKIグループは3つの事業を手掛けていますが、快活CLUBやアニヴェルセルをAOKIグループが展開している、という事実を知らない消費者も多くいらっしゃいます。私は、AOKIグループについて皆様が思い浮かべる企業像として、「様々な事業を手掛けていて、AOKIグループが運営、展開しているなら安心して利用できる」、そういったポジティブなイメージを想起していただけるようにしたいと考えています。このことは社員一人ひとりがAOKIグループの一員であることに胸を張ることができる、「誇り」の醸成にもつながります。

 社員をはじめ、株主、投資家の皆様、お客様やお取引先様といった多くのステークホルダーの皆様に、人々の多彩なライフシーンで“喜び”を創造するAOKIグループを実感いただけるよう、引き続き「RISING 2026」の達成に向けて邁進してまいります。